すでに10万部を突破!あの論破王ひろゆきも絶賛(?)のこちら、英語学習の救世主となるのかどうか、早速読んでみました。
作者について
マーク(村木幸司) さん 大手自動車メーカー勤務時代に、英会話教室でネイティブ講師に英語を習うも、ろくに会話もできず、TOEICは毎回300点台。しかし、英語の基本文法を学び直したところ英語学習に目覚める。TOEICのスコアも劇的に伸び、その英語力を活かして海外出張や海外駐在を経験。現在は脱サラして、基本英文法やTOEIC対策をオンラインで教えている。X(旧Twitter)でのピクトグラムを使った英語解説が話題(Amazonより)
どうやら、英語の専門家、ということではなく、一英語学習者として基礎から学び直してこられた方のようです。英検ではなく主にTOEICで着実に力をつけてきたのですね。その手法の一部を書籍で公開した、というところでしょうか。


いつも通り、気になるところにたくさん付箋をつけています。今回も英語参考書オタク(!)の活躍の場をお見せします(笑)
結論
・英文法の大枠から大胆に削ぎ落としている部分が多い(と思われる)ため、誤解を招く部分が多数存在、注意が必要である ・中高英語を一通り終えた成人むけである(英語をやり直す大人の方) ・小中学生が読む場合、一緒に読む・辞書で確認するなど、大人のガイダンスが必要である
前置詞のイメージなどは、ピクトで学ぶと効果的だと思いますが、英語や英文法に関するどのような事項でもピクトで表すことは難しいのでは?と思います。
良い点
・前置詞の表す「位置関係」がピクトでわかりやすく提示されている ・日常生活でよく使われる「ものの数え方」について、わかりやすく提示されている


石けんの数え方、自分は a cake of soap と習った記憶がありますが、現在はこちらの方が一般的のようです。確かに、型に入れて切りっぱなしの石鹸はbarといった感じですね。

a cake of soap で検索すると、お子様が喜ぶ「ケーキの形をした石鹸」の写真がたくさん・・・(驚)
総合的な注意点
・発音記号がJones式であり、現代において広く用いられているIPAとは異なるため、音声を重視しているとは言い難い ・上記発音記号も10ページ分しか表記がない ・「正しい発音を身につけよう」という表記があるのに、音声データの提供がない ・英文法の解説で、誤解されかねない表記がある(時制・自動詞・他動詞・その他)
「正しい発音を身につけよう」の文字が虚しく感じました・・・(個人的な見解です)


特に英文法については、初学者に配慮してのこととは思いますが、非常に荒削りであると思います。
一通り英文法を学んできた大人であれば、そういった点を斟酌しながら読み進められるので問題ないと思います。
前述した、「小中学生が読むのなら、大人のガイダンスが必要」というのはそういった点を考えてのことです。
Jones式発音記号は、その昔英和辞典でも広く用いられ、もちろん現在でも日本の英語教科書でも用いられている記号です。
例えば・・・IPA表記の /i/と/y/ を Jone式では [i] 一つでまとめて表記します。つまり、日本人の初学者には理解しやすく、使いやすいということで、日本で広く普及したようです。
そのほか、国際的に標準的なIPAとは一部異なる記号体系も含んでいます。
現在は、教科書や辞書によって、その判断が異なり、対象とする使用者の実態や、編集者の方針に従ってIPAを全面的に採用するケースも増えてきているのが現状です。つまり、いまだにJones式とIPAの両方が混在している状況にあります。
調べたところ、三省堂様のNEW CROWNはIPAを採用しています。東京書籍様のNEW HORIZONはJones式を採用しています。旺文社様の各級『文で覚える単熟語』シリーズもJones式表記です。
こういった課題を抱えながら、発音指導を行っている(実は行っていない??)日本の英語教育の現状を理解しておくことは重要です。
ということで、現代においては、特に国際社会で活躍する予定のMKキッズにとっては、Jones式ではなくIPAを併用しながら音源を中心に、正しい発音を身につける方が妥当ではないかと思われます。(あくまで私見です。)

自分は「接尾辞 -b」というのも聞いたことがありませんが・・・(専門家の方、誰か教えてください。)
英文法をピクトだけで説明する難しさ
1対1対応の限界


climb「登る」と訳されています。まず、辞書の定義を確認してみましょう。
climb: If you climb something such as a tree, mountain, or ladder, or climb up it, you move towards the top of it. If you climb down it, you move towards the bottom of it. (Collins Dictionary)
『木や山、はしごなどを登る(climb または climb up)とは、その頂上に向かって移動することを指す。また、climb down は、その下の方へ向かって移動することを意味する。』
(例文)Kelly climbed down the ladder into the water.
つまり、climbとは、『(おそらく手足を動かして)上や下の方に移動すること』です。
「上に登る」という意味に限定している動詞ではありません。
ところが、そのclimbの対義語として、slide を挙げられています。
slide: When something slides somewhere or when you slide it there, it moves there smoothly over or against something. 『何かに対してスムーズに移動すること』となっています。
いかがでしょう、climbの対義語としてslideのみを提示することによって、学習効果が上がるのか?と言われると自分は疑問に感じますが・・・

don’t like と dislikeを比較しています。 not likeの方がまだ適切ではないでしょうか?(初学者の場合、doesn’t likeは当てはまらないのかな、などという疑問が出やしませんか?ということです。)
時制のとらえかた


(1)未来を表す表現を「時制」の中に含めている
正確にいうと、『未来時制』というものはありません。(学校英語では、これまで便宜的に未来を表す表現を時制の一つとして含めてきたという事実はあります。)
英語の文法で言うところの時制とは
『「過去・現在」と言う時間的な関係を言葉の上に表すために、動詞の語形を変化させること。』(英文法詳解/ 杉山忠一著 より抜粋)
ですから、例えば、動詞の語形変化をしない will go…(goは原形)は、助動詞willに未来を表す意味が含まれているので「未来を表す表現」ですが、「未来時制」ではなく「現在時制」。
(2)「単純未来」の表記がない
未来「これからやる」との表記(つまり、「意思未来」)がありますが、will +動詞には「単純未来」(「〜でしょう」)もあります。
(例文)It will rain tomorrow.「明日雨が降るでしょう。」(現在の時点における明日の予想)→つまり現在形

かと思ったら、なんと「英語に未来形はない」との表記があります。前のページでは時制に含めているので、これでは混乱が生じませんか??
まとめ
・英文法の大枠から大胆に削ぎ落としている部分が多い(と思われる)ため、誤解を招く部分が多数存在、注意が必要である ・中高英語を一通り終えた成人むけである(英語をやり直す大人の方) ・小中学生が読む場合、一緒に読む・辞書で確認するなど、大人のガイダンスが必要である

英語は、すべてピクトで説明し切れるほど簡単ではありません。
購入されたパパ・ママは、このことを理解した上で、十分なガイダンスとともにご利用されることをお勧めいたします。
マジックキー ブログ 